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日系PEのパイオニア・アドバンテッジパートナーズの求める投資先CxOの特徴と活躍事例

株式会社アドバンテッジパートナーズは、1992年に設立された日本におけるプライベートエクイティ投資ファンドのパイオニアです。豊富な経営コンサルティング経験に基づき、経営への具体的かつ積極的な支援を通じて企業価値最大化を図るスタイルに最大の特色があります。
今回は、同社のパートナー 早川裕様に、同社の投資先で活躍される方々の特徴や、採用において求める人物像についてケンブリッジ・リサーチ研究所の本田がお聞きしました。

リーダーシップは当然ながら、愚直な実行力や柔軟性も求められる

本田:投資先の業界によって採用候補者のご経歴は様々かとは思いますが、御社では投資先CxO候補者を採用する際に、具体的にどのような点を重視しているのかについて教えていただけますでしょうか。

早川様:投資先の企業としての出自や成長ステージによって、採用の基準は異なると考えています。事業承継、大企業からのカーブアウト、再生ステージなど、その会社がどのような状況にあるかによって、我々や経営陣がその会社でどのような役割を担っていくか大分違ってきます。
特に分かりやすいケースですと、ターンアラウンドのフェーズにある企業があると思います。その局面ではやるべきことは決まっていることが多いですので、様々な施策を判断・実行し、その進捗を確実に見ていくことが必要になります。その愚直な実行力や実績がある方は、活躍できる方だろうと思っています。

また、事業モデルは基本的にAs-Isでいいのか、あるいはもっと成長させるための変化が必要なのか、という点でも大きく違ってきます。市場が伸びるので、事業の運営の仕方はAs-Isでいいという場合は、周囲の巻き込み方や組織を掌握する力が特に重要になってきます。市場は成熟しつつあるが、成長させる余地があると考えるステージにある会社の場合には、どちらかというとアイデア思考・新規発想を持つことが大切です。
もちろん、組織を巻き込むことのできるリーダーシップは、どのステージであっても必要ですが、ステージごと、会社ごとに、我々が見ようとする部分は変わりますね。

CxO候補としての問題解決力も見たいと思っています。何か問題が起きた時に、当事者としてその問題を分析してソリューションを見出し、実際に解決した経験や、少なくともそのような肌感覚をお持ちかどうかという点ですね。自らがコミットし、問題解決したという実績は、実際にお話している中で感じ取ろうとしています。

柔軟性についても見るようにしています。もちろんリーダーとしての芯をお持ちだということは必須ですが、それに加えて「そのような見方もありますね」と柔軟に適応していけるかという視点です。過去の成功体験にこだわり過ぎてしまってなかなか変えられないというのではなく、やはりいいものはいい、悪いものは悪いと咀嚼し柔軟に対応できる方ですと、仕事がお任せしやすいです。

また、細かい話になりますが、例えば前職の部下に「他の会社に移るけれど、ついて来るか?」と声をかけた時、その方に付いて行くと答える人が何人いるかというのは、実はとても大事な話だと思っています。投資先の経営者の方で、「優秀な人を連れてくるから、早川さん私を信じて下さい」とおっしゃって、実際に成果を出される方がいらっしゃいます。最近は、そのような人間力・人としての厚みもポイントだと感じています。

アドバンテッジパートナーズ 早川裕 様

「求めるのは見返りではなく活躍の場」という前向きな方が成功する

本田:投資先とそのフェーズによって大きく異なると思うのですが、成功される投資先CxO候補の方の共通点はありますか。

早川様:そうですね。やはり、前向きなリーダーシップスタイル、建設的に主張する力を持っている方でしょうか。

海外出張も含め、顧客や現場に足を運ぶフットワークの良さ、エネルギッシュさも大事ですね。

また、先ほども申し上げましたが、特定の分野の専門性に加え、他の分野でも通用するような基本的な問題解決の能力は必要かと思います。例えばマーケティングだったらマーケティングの中での専門知識や経験が必須ですが、経営陣としての全社課題に対しても洞察があり問題解決をリードする能力も大事な成功の要素です。

ポジティブなリーダーシップスタイルをお持ちで、専門性に加え基礎的な課題解決力、しかも色々なお話を汲み取り、理解いただける方に来ていただくと、我々も勉強になりますし、どのような投資先でも活躍できるのだと思います。

本田:投資先に入られた方々は、ファンドがイグジットされた後はどうされているのでしょうか。

早川様:投資先の企業に残るケースが多いと思います。私の担当先では、オーナー変更に伴ってご自身の意に反して会社から離れざるを得ないケースは今のところありません。皆さん、今でも活躍されている方が多くいらっしゃいます。

本田:では、最初から「キャリアとして、例えばIPO経験ができたので次にいこう」という考え方をされている方はあまりいらっしゃらないのでしょうか。

早川様:採用される方には、実際、少ないですね。もちろん私が担当した投資先でも、ファンドのEXITに伴い経済的メリットを獲得し、のちにご自身の意思で辞められたケースはありました。ただ、前述の通り、大体の方は残っています。

最初は我々からの引き合いがあって会社に入っていただきますが、候補者の皆さんが求めているのは、会社経営や会社を成長させるという活躍の場で、そのような場があるならば、実は株主が誰かとういうことに関しては、実はあまり意識されてないのではと感じています。
弊社やファンドのために働いているというよりは、この会社のために働く中で、偶然にも株主が変わった、インセンティブがついたという感覚ではないでしょうか。

基本的には「次のオーナーの傘下でも頑張る、新しい視点で違ったことができそうだ」と思う方のほうが多いと個人的には思っています。 また、我々としてはそういった思いの方と一緒にお仕事したいと思いますね。

本田:特にCFO候補の方とお会いすると、イグジットした後の自分のお金がどうなるのかすごく気にする方がいらっしゃいますよね。

早川様:そうですね。ご心配も理解できますが、もちろん我々の考えていたように成功していただければ、それなりの見返りはあると思います。

投資成功の鍵は、社長・CxO・株主のやりたいこととやるべきことのミスマッチをいかに減らすか

本田:これまでたくさんの企業に投資されてきたかと思いますが、成功した投資案件の共通点、逆に失敗した案件の原因についても教えていただけますでしょうか。

早川様:投資を検討する際に、初めに「どういうダイナミズムの業界・市場で、どのようなポジション、どのような付加価値を提供する会社なのか」といった理解を深め、この会社にはどのような成長を実現してほしいか、投資テーシスというものを構築します。

それから、特に投資後に明確になることが多いですが「この会社はどういう組織や人で構成されているのか」といった組織の中身や仕組みについて洞察を深める努力を行います。

また戦略や組織だけではなく、どのような会議体でどのようなKPIを使っているのか等、会社の意思決定の仕組みを知ることも重要です。

新たに外部から社長やCxO人材を招聘する場合は、その理解・洞察をなるべくタイムリーに共有するようにします。

事業承継の場合は、中間管理職の実行力が弱いケースが多く見られ、一方で大企業のカーブアウト案件の場合は、真面目にきちんと管理することはできるが「過去のことを踏襲しがち」といった保守的な組織であることが多いです。そういった認識を言語化して理解に齟齬がないようにすることが大事と考えています。

先ほど申し上げた通り、案件や会社のフェーズによって特徴が異なるので、業界構造や会社の競争力、組織構造や経営インフラ等、なるべく早い段階にしっかりと押さえる必要があるのです。

それら全ての中心となるのが社長やCxOですが、多様な状況が入り混じった案件の中で、一概にCxOの良し悪しについては測れません。いかに上手にオンボードしていただき、ご活躍いただけるかは、我々投資の責任者が考えることでもありますので、正直なところ、ケースごとの成功・不成功については分類は難しく、むしろ我々の責任の方が大きいと思っています。

ただ我々としても様々な施策は打ちます。例えば、再生のフェーズが終わりいよいよ成長だという時に、まだ再生ステージのままの思考であるため上手に組織を動かすことができなくなってしまうケースがあります。成長ステージは、コスト削減やキャッシュフロー改善など、ある程度の定石がある世界ではなく、いかに売り上げを上げていくか、自由な発想も必要であり、実際にはそのアイデアを実現するための進め方は多様であるなど、ソリューションスペースが広いことが多いです。

その時に我々が何をすべきかというと、社長とは、少し違うバックグラウンドの方に会社に入っていただき、新規事業をお任せすることもあります。事業環境も会社自体も常に変化しますので、社長やCxOに活躍いただける状況なのかどうか、そうでなければどのような策があるのか、常に洞察を持っている必要があります。我々として会社経営を放置したら駄目だと思っています。常に社長やCxOと話をしながら、更には部課長クラスの方ともお話をしながら、会社がどういうステージにあるのかを考え、我々にできることを常にやっていかなければなりません。

失敗するパターンとしては、その会社の社長やCxOのやりたいこと、株主としてやってほしいこととの間でミスマッチが起きた瞬間だと言えるかもしれません。

元コンサルタントとしてトップに寄り添った視点でのアドバイスを心がけている

本田:投資先の事業が上手くいかないケースももちろんあると思いますが、そのような時、早川様の立場として投資先CxOへのアドバイスや関わり方はどのようにされているのでしょうか。

早川様:常に我々は社外取締役として投資先に関与させていただきます。しかし、時にはある社内プロジェクトを立ち上げたいけれど会社に人的リソースがない場合など、私がプロジェクトリーダーになってプロジェクトを進めます。その際は、レポートto社長/CxO、場合によっては、レポートto営業部長や工場長などになります。

もともと私自身コンサルティング会社出身ですので、社内の会議に一緒に入らせていただいて、議論を整理したり、ネクストステップを提示したり、タスクを割り振ったりと、モデレーターのような役割も担います。

社外取締役ではありますが、トップに対して私は部下という関係性にもなります。よく「無料のコンサルタントのようなものですね」と言われることもありますし、実際にそうだと思います。企業価値の持続的な拡大という観点で相互に理解があるならば、トップがやりたいことを妨げないように、その取り組みどう効率的に実行するかという観点でアドバイスを行います。

本田:株主という背景を口実に一気に会社を変革するケースもあるのでしょうか。

早川様:ほぼないですね。実際、経営幹部の理解が無い中でそのようなことを実行しても、社員の抵抗にあって終わりです。一度それを実行してしまったら、投資先からの信頼を失ってしまいます。先ほど申し上げたような会社との関係性を取り戻すことは容易ではないと思います。

我々として仮にやりたいことがあるのであれば、しっかりと社長やCxO人材と議論を重ねるようにします。
ただ、議論を続けた結果として、「よし実行しよう」となった施策が我々が考えていたことと少し違っていたとしても、実は、私の出自はコンサルタントなので、「代替となる施策をどう成功させようか」というモードに切り替わることがほとんどです。

本田:ファンドに対してネガティブなイメージを持たれることも時にはあり、投資先CxOは苦労されるシーンもあるかと思います。一方で、このポジションに就くキャリア上のメリットについてはどのようにお考えでしょうか。

早川様:株主がひとつですので、「しっかりと株主と向き合い、会社の経営を担いたい」という方にとっては非常に良い環境だと思います。

例えば、私が投資責任者として携わっている投資先は、私との議論の結果は株主との議論の結果と同意義になります。それが、上場会社のように株主にも様々な方があり、株主としての声が実際には明確には届いてこなかったり、あるいは配当を要求するだけの株主がいる環境だったとすると、経営者として研鑽を積む場として良いのかというと疑問に思います。

本当にプロ経営者になりたいと思う方は、PEファンドが株主であるという環境を上手に使うことをおすすめしたいですね。

磨いておくべきは、厳しい環境での「当事者としての問題解決経験」

本田:今後、ファンド投資先での業務経験がない方が、投資先のポジション候補に入るために、事前に磨いておくべきスキル・経験などはありますか。

早川様:例えば大企業から転職される方で我々が見ているのは、「その成果は誰が出したのか?」という点です。リソースの厚い会社で「あるプロジェクトを成功させました」と語られても、果たしてその方が当事者として実行したかどうかという点はとても見ています。

一方で、例えば子会社に移り、リソースの潤沢でない世界で何かを勝ち取ったといった経歴は、その方の能力を分かりやすく示してくれると思っています。
子会社や場合によっては赤字部門に異動して成果を上げられた、あるいは他社とのジョイントベンチャーで相手の会社から無理難題を要求されたものの、企画部長や事業部長としてその事業を成功させた…といった経歴があると評価が高いと思います。

また、一度コンサルティングファームを経験してみるというのも分かりやすい指標だと思います。事業会社の後にコンサルティングファームに入社し、そしてまた事業会社に戻る。先程フレキシビリティの話もしましたが、コンサル出身の方ですと我々と会話しやすくなるので、その点からも高評価ですね。

「頭の良さを見せつける」のはネガティブ。あくまでも実績ベースでのお話ができるマインドが重要

本田:投資先CxOの方に求められる条件をいくつかお伺いしましたが、マインドや考え方といった視点が合わず、見送られる方の共通点はありますか。

早川様:我々の投資先ポジションでは、評論や企画で終わる人よりも、多少我々と言葉が噛み合わないとしても、実は売上を上げたりコストを下げたりしてきた実績がある方が好ましいと思っています。
ですので、「頭の良さを見せつける」ことで面接を乗り切ろうというのではなく、実績や当事者として問題解決をしたという経験を披露してくれる方、あるいはそれを次の投資先、次の職場でも再現したいと考えている方のほうが良い印象です。

ロジカルシンキングや、頭が良いということを面接で示したいというマインドセットの方だと、投資先の会社に入っても、結局上滑りすると思います。

我々は大きな投資先を持っているわけではなく、売り上げ規模で言うと100億~200億、大きくても300億円程度のサイズなので、ハンズオンという視点をCxOのポジションの方にも求めたいと思っております。

本田:やはり目線が合わせられないと難しいのですね。

早川様:そうですね。株主、会社、ご自身、そして部下の方との目線が合わないと、あるいは合わせる能力がないと、投資先に入ってから苦労されると思います。我々との会話では苦労されなくても、会社の中での会話に苦労され、次第に当初の考えや自分の領域とは関係ない仕事が降りてきてしまい、その結果、自分のバリューが出せず、経営会議の場でも「報告内容が薄くなってきたな」と感じる時が実際にあり、非常にもったいないと思ったことがあります。もちろん、それを支援できていない我々の責任もあります。

投資先に「自分の価値を早めに感じてもらう」ことで、メンバーの心に火を付ける

本田:最後に抽象的なご質問で恐縮ですが、御社が採用したCxOが投資先に入り込んでいく際、当然ながら文化もバックグラウンドも違う社員の環境に入るわけで、当初は相手方の警戒心が強かったりするケースもあると思います。その時に、どのように入り込み、そして従業員の方に火をつけていくのかを教えていただけますでしょうか。

早川様:実は、我々ファンドのメンバーも同じ課題を抱えています。私自信は早い段階で、「私は皆さんにとって有用な人間です」ということを示そうとします。
例えば、経営会議において議論がうまくかみ合わないなどネクストステップがあまり見えてない時があるとします。その場に転がっている、誰も拾わないアジェンダを「やります」と言って私が拾って次の経営会議で進捗をレポートする 。
要は、我々がこの会社に関与していることのメリットを早めに示すことが大切なのです。

つまり、どこで我々の価値を発揮するかということを常に考えていますが、それはCxOの方も同じだと思っています。例えばご自身の経験から、自信をもって成功すると思えるトピックをまず率先して手掛け、「この人って、この分野だと凄い価値を発揮するんだ」というのを見せる瞬間を作るのです。

そうなると、関係各所から様々な相談がくるようになります。
「こんなことが起きているけど、●●さんどう思う?」「あの社員、最近力が出しきれてないようだけど、なにが原因だと思います?」など。そこまでいけば、会社の一員ですよね。
社内情報も、社長より先に入ってくることもありますので、社長に「こんなことありましたけど、どうしましょうか?」と我々から相談をしたりもします。
ですので、会社の中にどうネットワークを作るかという意味でも、「あの人に何か言うと自分たちの仕事が楽になる」と思わせるのが結構大切なポイントだと思います。

本田:ありがとうございます。そのようなアクションを繰り返されてる中で、本格的に「この会社に火がついた」と感じられる瞬間もあるのでしょうか。

早川様:ありますね。例えば新規事業が始まった時でしょうか。

私が今担当している会社を例にすると、その会社はどちらかというと既存の専門領域を深めることに発想が集中していたのですが、CEOにはユーザー側出身の方に入っていただきました。

競合ではなく、ユーザー側のご出身ですので、「自分達の専門領域しかやりません」という発想に偏らず、「本来この会社ってこんなこともできるのではないか」「あんなこともできるのではないか」と柔軟にアイデアを出していただい結果、それに応えようと社員全体が、自社のビジネスの可能性を感じ始めました。

要するに、「探索」が始まったのです。そんなこともやって良いのかと気づき始めると、社員は徐々に「株主や社長、CxOが変わったら会社も変わるのだ」と思い始めます。それから一気に、専門領域を深めるだけではなく、ほかの可能性も探索する仕事もしましょうという発想になり、その考えが会社の体質となってゆきました。

この企業は私がメインで関わっており、前とは全く異なる会社になっています。毎回訪問する度に違うトピックが出てくるので、「あれ、もう新しい企画が生まれたんですか?」と驚くことも多いです。

やはり、ファンドが入り、CxOが変わり、地道なアクションを繰り返していくうちに「何か変わったな」という感覚が組織の末端まで知れ渡ると、会社全体が変わると思います。

【プロフィール】
株式会社アドバンテッジパートナーズ
株式会社アドバンテッジパートナーズは、1992年に設立された日本におけるプライベートエクイティ投資ファンドのパイオニアです。豊富な経営コンサルティング経験に基づき、経営への具体的かつ積極的な支援を通じて企業価値最大化を図るスタイルに最大の特色があります。

早川裕様
早稲田大学理工学部卒業、米カーネギーメロン大学技術政策学研究科博士課程修了(Ph.D.)。2000年よりマッキンゼー・アンド・カンパニーにて、自動車、通信、半導体・電子部品など、製造業・ハイテクの分野で各種の経営コンサルティングに従事。2008年にアドバンテッジパートナーズに入社。投資先経営支援チームとしてMEI/株式会社日本コンラックス、株式会社ウィルコム、GST Autoleatherなどに関わった後、投資チームとして、株式会社エフ・エム・アイ、ファスフォードテクノロジ株式会社、ユナイテッド・プレシジョン・テクノロジーズ株式会社(株式会社協成、コーケン化学株式会社)を担当。主に製造業・ハイテク、B2B企業を対象に活動している。

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