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Interview

インタビュー

2019.07.19

Interview

日本成長投資アライアンス(J-GIA) 代表取締役 /ディレクター インタビュー

日本成長投資アライアンス株式会社(J-GIA)は、日本たばこ産業株式会社(JT)、株式会社博報堂をアライアンス・パートナー企業とし、パートナー企業が有する経営力(人材、ネットワークなど)・クリエイティビティを、同社が運営するファンドが投資する中堅・中小企業に事業支援として提供できる点に強みを持っております。

今回は、同社を率いる代表取締役の立野公一様に、設立の背景や、同社が求める人物像について、また、投資先責任者である、ディレクターの中山淳 様、藤原摂 様に、投資スタンスや投資先ポジションに求める人物像について、ケンブリッジ・リサーチ研究所の島津がお聞きしました。

  • 【代表取締役 インタビュー】
    「投志家」集団・日本成長投資アライアンス(J-GIA)ー普通のファンドに終わらないこだわりとは

    日本成長投資アライアンス株式会社(J-GIA) 代表取締役 立野公一 様

    単なるバイアウトモデルではなく、大企業のリソースを活用したバリューアップを目指しJ-GIAを設立

    島津:はじめに、立野様がJ-GIAを設立した経緯や、他のPEファンドとの違い・特徴についてお聞かせいただけますか。

    立野様:日本のPEファンドは、約20年前にアメリカから輸入したバイアウトファンドのビジネスモデルをベースに投資やバリューアップを行っていることが多いと思いますが、日本に適したバイアウトファンドの進化系が必要ではないかと考えました。

    具体的には、特に日本では大企業に偏りがちな経営リソースを、潜在的成長余力のある中堅・中小企業に提供することによりその成長を実現するPEファンドです。博報堂とJTにもこの理念に賛同して頂き、この2社とアライアンスを組み、これまでのPEファンドとは一線を画した特徴を生かしてバリューアップを提供できるPEファンドとして設立しました。

    島津:ありがとうございます。実際に、博報堂とJTとのアライアンスが御社の大きな特徴であると思いますが、立野様が両社にフォーカスをし、アライアンスを組むことになったきっかけはございますでしょうか。

    立野様:以前、ある大手外食チェーンへの投資を担当しておりました。その会社のブランディングを徹底的に変えたのが博報堂でした。私は投資ファンドの立場で関わっておりましたが、その投資先の成長に対して最も貢献したのはファンドではなくて博報堂のクリエイティビティでした。そういった博報堂と連携した事業支援を継続的に提供する仕組みが出来ないか、と話を始めたことがきっかけです。

    その後、マーケティング的な支援によりトップラインを伸ばすことができる博報堂に加えて、経営管理を強化する側面でのパートナー企業も必要と考えいろいろな会社と話をしました。その結果、特に企業の成長を支援することに対して、JTから賛同を得た、という経緯です。

    博報堂のクリエイティビティと、JTの経営管理。攻めと守りの両輪を強みとした支援体制

    島津:2社と組んだバリューアップの強みは、具体的にどういったところにございますでしょうか。

    ケンブリッジ・リサーチ研究所 島津

    立野様:博報堂は広告代理店という枠組みではなく、クリエイティブエージェンシーとして組んでおり、「投資×クリエイティビティ」の観点での取り組みを重視しています。
    コンサルティングファームでは「デザイン思考のコンサルティング業務」や、あるいは「経営にデザイン思考を」というのが少し前から流行っています。ただ、我々は流行りになる前からクリエイティビティによるバリューアップ、経営におけるクリエイティビティの役割を強く感じていました。

    島津:いわゆるコンサルティング会社が想像できるものと違う、斜め上の発想なども出てくるものでしょうか。

    立野様:仰る通りです。経営においては、自社の社員に対しても然り、お客様に対しても、コミュニケーションが重要です。良い製品があっても、良いアイディアがあっても、コミュニケーションの質によって結果は大きく異なってきます。博報堂との連携により、より効果的な、心に刺さるコミュニケーションを経営の現場に持ち込めるのが大きな強みです。

    あとは、事業開発、ビジネスモデルを考える上でもクリエイティブな発想で様々な新しいアイディア創出をしております。単純なコストを下げるだけのバリューアップではなく、きちんとトップラインを伸ばし、更にはビジネスそのものの進化を実現することが本当のバリューアップだと思っております。そのような観点から、繰り返しですが、広告代理店ではなくクリエイティブエージェンシーとしての博報堂に期待ができます。

    島津:どちらかというと攻めの博報堂と、ディフェンスのJTというイメージがあります。

    立野様:その通りです。
    JTは経営管理のサポートに入るというイメージです。JTの方々で、特にこのプログラムに参加される方々は極めて優秀です。JTの中でも将来経営幹部になることが期待されているような中堅の方々が関わっています。

    博報堂の人たちは、いい意味で普通の会社員ではない。
    博報堂の中でも優秀なクリエイターたちは、本当に発想が豊かです。そういう人たちが持っているアーティスト感覚とか発想力は素晴らしいですし、ある種の非連続な成長を創れる人たちだと思います。

    投資先の中堅・中小企業には不足しがちなこれらの経営リソースを活用し、今後も1件ずつ丁寧に投資をして、丁寧にバリューアップをしていく。それ以上でもそれ以下でもないと思っています。
    外部からプロ経営者に入っていただく案件においては、その経営者をしっかりと側面支援できる体制を個別案件毎にテーラーメイドでつくり、成長を実現し、投資リターンを創出することを1件1件積み重ねていくだけです。

    投資先の「成長の実現」に対する拘りの度合いが “普通の”ファンドとの違い

    島津:投資される側の企業から見たときに、どういうファンドと見られたいか、また御社と組むことで得られるメリットについてはいかがでしょうか。

    立野様:投資行為自体は普通のファンドに近いですが、その後の関わり方や、大企業のリソースを活用する部分では圧倒的な違いがあります。中堅・中小企業には得難い多様なリソースを提供するという意味で、普通のファンドではない自負があります。

    それから、成長を必ず実現する姿勢にこだわっています。これは投資先を評価させていただく際に重要視していますし、その後のリソースのご提供でも成長に徹底的にこだわっています。手前味噌ですが、このような投資先との関わり方も普通のファンドとは異なると考えています。

    島津:最終的に投資される側の企業としては、成長を実現するためにパートナーを選んでいると思います。「日本成長投資アライアンス」という社名に、あえて「成長」と入れているのはそういった想いも踏まえているのでしょうか。

    立野様:はい、社名に「成長」と入れているのは、「成長」にこだわる企業を支援したいという想いからです。
    成長を実現するにはクリエイティビティが必要だと考えておりますが、企業の成長というのはトップラインだけを伸ばせばいい訳ではなく、きちんと管理面も強化しながら攻めと守りの両軸を回していくことが大事になります。その両輪を回せるアライアンス・パートナーと一緒に取り組んでおります。

    加えて、「アライアンス」も非常に重要だと実感します。
    博報堂・JTとのアライアンスはもちろん、投資先のマネジメント、従業員、関わるすべての人や会社と、我々の投資家も含めて、広義のアライアンスとして捉えています。
    たとえば弊社の投資家も、投資先に対して提供するソリューションをいろいろ考えてご提案いただいています。全ステークホルダーを含めた広義のアライアンスです。あらゆる力を結集して成長を実現させていくというのが、この社名に込められている想いですね。

    繰り返しになりますが、出資に応じるとか、株式を譲り受けるとか、投資の行為自体は他の投資ファンドと同じです。お金の集め方もファンド形式で集めるやり方も同じです。
    ですが、成長に対してこだわりを持ち、徹底してリソースを提供する。そのリソースを大企業とのアライアンスを通じて提供する、さらにマネジメントとの関わり方、マネジメントチームの支援の仕方。この辺りが他のファンドとは圧倒的に違うと思います。

    能動的に成長実現のてこを探しに行くパッションある人材が自ずと結果を残す

    島津:人材の観点でいくと、御社の投資プロジェクトの社員として、スキルはもちろんのこと、それ以外のパッションや想いは結構こだわって見ていらっしゃいますか。

    立野様:非常にこだわっています。まず、投資判断においては徹底して細かいところまで追求し、成長仮説を徹底して議論を行うので、投資判断をする局面でもパッションがないと、我々が求める深さで物事を見ることに付いてこられないと思います。

    さらに、いざ投資した後の支援においてはやはり投資先に対する強い想いや、あるいは成長を必ず実現したいという強い信念をもって仕事をしていると、結果はおのずと異なってきます。

    自ら「何か成長を実現するてこはないのか」を能動的に、網羅的に、徹底的に探し見出すことが重要で、それは相当パッションがないとやっていけないと思います。

    島津:御社のメンバーの方は、他PEファンドやプロフェッショナルファーム出身の方を含めて、特にレベルの高い方が多い印象です。御社が優秀な人材から選ばれる理由について教えていただけますでしょうか。

    立野様:弊社の人材は確かに優秀で、トップティアだと思います。こちらが採用したというよりむしろ弊社を選んでもらったという感覚です。「なぜ彼ら/彼女らが弊社を選んだのか」ということを知っていただく方が重要です。
    彼ら/彼女らはPEファンドに限らず、どこにでもいけるような人材です。弊社が差別化できている点や、成長を実現するプラットフォームであることを理解しているのだと思います。

    J-GIAでは、チーム一丸となって一心不乱で投資先企業の成長を追求しています。そして、我々J-GIA自身の成長を一緒に追求しているチームです。そういうチームのエネルギーに惹かれて、弊社を選ぶ人が多いと思います。

    今後も、1件1件の案件で個別に成長にこだわっていく

    島津:ありがとうございます。現時点で多様な業界にご支援なさっておられますが、立野様が注目されている業界などがございましたら、お聞かせいただければと思います。

    立野様:業界には大きなこだわりはありません。

    博報堂、JTともにBtoCの印象をお持ちの方が多いからかBtoCが強いのではないかと思われております。確かにBtoCには自信はありますが、BtoBの会社にも数多く投資をしていますし、その領域においても博報堂のクリエイティビティは活かされます。

    また、JTによる経営管理は、どのような業界であっても共通事項ですので、BtoCだけではなく幅広い業界に生かされています。幅広い業界に投資を行うことは、ファンドとしてもリスク分散という観点もあります。

    投資判断の決め手も、一般論では言えないことがほとんどです。個別に見て、成長する余力が高く、私達の支援も含めてそれを実現することができるか否か。実現可能性が高い案件というか投資先には、成長にこだわった投資・支援を個別に実行していく、そこに尽きます。

  • 【ディレクターインタビュー】
    JT・博報堂のリソースを活用した「中堅・中小企業への事業支援」に強みを持つ日本成長投資アライアンス(J-GIA)で活躍する投資先CxOの特徴とは?

    プレIPOから事業承継まで、成長にフォーカスした投資スタンス

    島津:日本成長投資アライアンスとしてどのような投資先を扱っておられるのか、簡単にご教示いただければと思います。

    藤原様:弊社の特徴としては、社名に「成長投資アライアンス」とある通り、成長ポテンシャルが高い企業に投資をしています。
    具体的には、JT、博報堂、弊社のコンサルティング部隊であるJ-GIAコンサルティングをうまく活用いただくことによって、飛躍的な成長を目指せるような、そんな企業に投資をしたいと考えております。

    例えば、私が担当している案件の「ポテトかいつか」は、成長著しい、さつまいも専業の食品会社です。先代の創業社長からバトンを受け継いだ二代目社長を始めとした経営陣と共に全国区の企業へと成長を目指しています。

    もうひとつ、最近クロージングした案件で、化粧品企画製造のBtoB企業があります。良いプロダクトを持っているものの、ニッチなチャネルでしか商品を売っておらず、一般的な消費者が当社の商品を余り知ることができない、買うことができない、そんな会社です。
    弊社による投資後は博報堂と組み、より多くのお客様に知っていただけるようマーケティングに力をいれ、また買いやすくなるような施策を実行していく予定です。
    これはまさに私どもJ-GIAと博報堂との組み合わせによることで成長を追求できる、そんな事例ではないかと思っています。

    ディレクター 藤原様

    中山様:藤原からも「成長にフォーカスした投資」という点で申し上げましたが、もうひとつの投資の類型は、グロース・キャピタルです。我々がグロース・キャピタルと言う時は、いわゆるマイノリティ投資による成長支援も包含しています。我々のような規模のファンドで、マイノリティ投資、かつ、JT・博報堂などを活用した事業支援をするというのはなかなかないと思います。

    グロース・キャピタルの具体的な例として、私が担当している案件では、中古マンションリノベーションの会社があります。年率20%超での成長を続けており、IPOを目指して更なる成長を目指されている成長性の高い会社になります。オーナーとしては、資金調達ニーズはそれほどないものの、成長支援、IPO支援を目的として、弊社のマイノリティ出資を受け入れることを決断されました。
    JTの経営人材を派遣することによるIPOに向けての管理体制の強化等を行うことに加え、博報堂によるグループビジョン策定やPR活動による企業ブランディング、 J-GIAコンサルティングの活用による業務効率の改善など、単独では成しえなかった成長に向けた活動を支援しております。

    また、バイアウトの事例になりますが、1月に案件発表した油圧ホース・口金のファブレスメーカーである「プロフレックス」という会社に事業承継を背景とした投資も行っております。
    事業承継の中でも珍しい形だとは思いますが、オーナーのご年齢等に鑑み、オーナーが株式をすべて売却し即座に経営から引退するという、案件になります。投資検討の段階から次の経営トップを探し、投資実行直後にその方にトップに就任頂いたという案件です。

    事業承継といってもただ単に事業を引き継ぐだけではございません。オーナー企業というと伸び盛りの時はどんどん成長するのですが、設立から50年が経って、オーナーも高齢になると、どうしても新しい取り組みにチャレンジしたり、リスクを冒してさらに成長したりという意識は低くなってしまいます。弊社による投資後は、営業リソースの増強による全国展開をはじめ、顧客に伝わりきっていない当社の強みを整理し、ウェブ等を通して適切に伝えることによる新規顧客の獲得など、これまで取り組まれてこなかった積極的な攻めの施策の実行の支援をしています。

    ディレクター 中山様

    組織を団結させる泥臭さ、1人で何役もこなす自走力の高い方が活躍

    島津:ありがとうございます。
    実際にお二人がご担当されている投資先でご活躍されている人物像について、一概には言えないと思いますが、お聞かせいただけますでしょうか。

    中山様:プロフレックスのCEOの方についてお話しします。

    先程お話した通り、プロフレックスでは投資実行と共にトップを外部招聘しました。従業員数は25人ほどの小さな会社です。我々の投資先は一般に、従業員100人前後の規模の会社が多く、そのような規模の会社に「大企業出身です」「前職は戦略コンサルでした」などという形で上から目線で入ってもやはりうまくいきません。

    そのような場面で大事なのはコミュニケーション能力だと思います。投資先の従業員は突然オーナーが経営権をファンドに売却して「自分たちはクビを切られるのではないか」とまで考えたりするような状況です。
    そのような状況では、いくら正しくても独りよがりな成長プランを示したり、資本の論理を振りかざしたりしても、うまく会社を運営することはできません。今回CEOとして来ていただいた方は、就任後に1人1人とひざ詰めで面談をして、従業員個々人の考えを理解するとともに、自分がなぜプロフレックスのトップに就任したかを語るなど、従業員にしっかりと向き合って頂きました。

    また、オーナー企業時代には考えられないことだったと聞いていますが、全社集会を開いて、経営ビジョンや目標を伝えるだけではなく、そのために従業員一人一人の英知や努力が必要なこと、皆で団結して目標を達成しよう、というような形で従業員を巻き込んでいきました。そういった、ある意味泥臭さも兼ね備えた人間性が重要なのではないかと考えています。

    島津:ありがとうございます。藤原様はいかがですか。

    藤原様:共通して言えることとしては、私どもがお手伝いする企業様というのは中堅中小企業で、組織が大きくない会社が多いです。100人、200人の規模の会社で、自身の仕事領域に縛られることなく、何でもやるような方が必要です。

    例えば、CFOとして参画いただいた方には財務だけでなく、法務やIT、総務まで含めて担当していただいたこともあります。部長級の方でも、単に管理職として部下に指示を出すだけではなく、何かあったら現場に入っていって、泥臭く、一緒に腕をまくって動くことが出来る方のほうが上手くいくと思います。

    島津:当然CXOには限らないとは思うのですが、「CXOのXとは何」という時に、CEOもあればCOOやCFO、最近ですとCSOなども出てくるかと思います。
    御社の傾向としては特に御社ならではのコンサルティング部隊と、JT、博報堂との強みを活かせるという中で、それでも足りない外部人材で、こういう人材と接点が持てたら助かるというような、求めるスキルセットはありますか?

    中山様:会社全体を俯瞰して戦略を考えられるCSO(Chief Strategy Officer)が必要という考えが個人的にはあります。

    J-GIA、JT、博報堂という座組みの中で、JTからの派遣人材は経営管理の強化が中心となる「守り」、博報堂はマーケティングを中心とした「攻め」の支援になりますが、それらの支援も一つのリソースとして考え、会社としての全体戦略の立案から実行までトップの右腕として幅広く担って頂ける人材が必要となってくるケースが多いです。
    我々の投資先になる中堅・中小企業では、オーナーが中心となって物事を判断しており、このような経営戦略の立案・実行機能などが不十分なケースが多くあり、特に事業承継案件では重要なポジションとなります。
    具体的な動き方としては、博報堂のリソースを使って会社の強みを言語化して対外的にアピールしたり、J-GIAコンサルティングと改善余地を分析し実行に落とし込んだり、弊社が持つリソースを含めた様々な外部リソースと一緒に動いていくことになりますので、全体を俯瞰的に見て判断・行動できることが重要となりますが、小さな規模感の会社でもあるため自ら手も足も動かせることも同時に必要だと感じます。

    事業承継の場合は上述の通りですが、IPOのケースは、また違うのかもしれません。

    藤原様:そうですね。IPOを検討している成長企業にも多く投資していますが、IPO後、どうような体制で会社運用をしていくかが重要です。IPO後に経営のガバナンスが緩んだり、正しい意思決定ができなくなってしまう等の事態が起きないよう、しっかりとした経営陣が必要と考えています。CXOの方々には、その後もちゃんと会社に根付いていただける方が良いと思っています。

    語弊があるかもしれませんが、私どもは、オーナー社長が引退された後も会社が繁栄するよう、「オーナー経営」から「チーム経営」への体制づくりをお手伝いしています。組織を構築し、会議体を整えて、経営陣がチームとして運用する体制です。

    島津:今のお話に関して、CXOを志向するタレント側からよく出る質問をお伺いさせてください。投資先に行くというと、候補者の懸念点で挙がるのが、イグジットまで無事に自分が貢献できたとして、その後どうなるのか、という内容です。
    当然、イグジットがIPOなのか売却なのか、その時々で変わってきますが「必ず骨をうずめて未来永劫できるという話ではないです」という話はするものの、こればかりはどうなるか分からないという懸念を持たれがちです。
    実際、御社が求めるCXO人材は、長く腰を据えてやりたいというような方がマッチするのでしょうか。

    藤原様:イグジットはケースバイケースになりますが、いずれのケースでもキャリアパスとしてご心配いただく必要はないと思います。

    イグジットは大きく事業会社に売却(M&A)もしくはIPOに大別されます。M&Aの場合、次の株主の意向によってマネジメントを継続するか継続しないかが決まりますが、事業で重要な方々は高い確率で続投してほしいとお願いされると思います。M&A後の人事の機微は事業会社同士のM&Aであっても大差ないと思います。

    IPOの場合、経営体制については一般の株主から信認を得る必要がありますので、会社や大株主だけで決める話ではありません。社内外から、「その人が大事だ」となれば、自然とその方が昇進されるでしょうし、その方が社長になるパターンもあると思います。

    いずれにせよ、私の感覚では、投資ファンドと一緒に投資先の業績改善に携わって、実績を残された方は、日本市場では引く手あまたではないでしょうか。少なくとも私どもは、その様な方々に再度お願いしたいと思っています。

    中山様:私の関与している案件ですと、先ほど申した通り、小規模な会社が多いです。そのようなケースではCXOで入っていたとしても組織の重要なメンバーになるので、事業会社に売却したからといっても続投を依頼されることが多いものと考えています。
    続投を依頼されることに対しての考え方は人それぞれだとは思いますが、買い手にとっても非常に大事な事業として買収され、買収後もCXOとして残って経営を続けるというのは、その方のキャリアとしても貴重な機会ではないかと思います。

    新しい風を吹き込むと同時に、創業者の想いを引き継ぐ姿勢で信頼を得る

    島津:伺っている中で御社の特徴と魅力というのは、大企業ではない中堅中小企業サイズの魅力ある企業に対して支援をしていくというところは私個人も非常に共感しております。
    とはいえ、長らくオーナー企業、ある意味、国のようなかたちで進んできた会社様が、社長や株主が変わって、ファンドの方々に対しておそらく警戒されている中で入っていくご経験をお持ちだと想像します。そういった場面で、最初にどのようなかたちで関係づくりの第一歩、いわゆる信頼構築をどのようにファンドのみなさんがアプローチされているのか、お聞かせいただけるとありがたいです。

    ケンブリッジ・リサーチ研究所 島津

    中山様:事業承継といっても本当に千差万別で、藤原の担当案件のように、オーナー家・創業者は一歩引かれてもご息女が残られているパターン、私の担当案件のようにオーナー家がご退任されるパターンもあります。

    冒頭でご説明した通り、プロフレックスへの投資は、創業50年の会社で高齢の創業者が会長、ご子息が社長という会社で、創業家から株式を譲っていただいた案件でした。

    我々としてはDay1から経営トップを招聘する案件ではありましたが、やはり50年間続いた会社に、いきなり外からやってきた人がはいって、役職員の人心を掌握して経営を引っ張るのは難しいところがあります。ですので、我々として「創業者の思いをしっかり引き継ぐ」ことや、「創業者に我々を選んでいただいた」ということなど、これまで長年に渡り培われた背景をしっかり理解し、受け継ぐというところから始めました。
    この案件で大きいのは、創業者が我々J-GIAのことを「彼らに託してよかった」というふうに思ってもらえたことだったと思っています。
    投資直後から創業者とは密なコミュニケーションを心掛け、J-GIAがなぜこの企業を選んで投資して、会社の強みをどのように理解しており、どのような成長方針かという考えをしっかりとお伝えしました。また、創業者が成し遂げられなかった夢や思いについても、腹を割って語って頂く機会が何度もありました。

    そのような会話の中で創業者から、実際に「自分は後継者の育成もできず、成長余地があるのも分かっていたが年齢もあってチャレンジできなかった。ぜひそういう余地を本当に実現してほしい。本当にJ-GIAさんに最初に託してよかった」と言っていただけました。こういったことをしっかりと従業員のみなさまにもお伝えしていただける機会もありました。
    企業DNAや想い・考えをしっかり引き継いでいきますという道筋を示すことが、特にオーナー系の事業承継案件においては重要なのかなと思います。
    大企業のリソースや成長支援とかいう以前の泥臭い話にはなってしまいますが。

    相手に寄り添う現場目線と、JT・博報堂のリソースも巻き込むチームプレイが求められる

    島津:ありがとうございます。実際にそういうご苦労がおありになって、会社ではあるものの一般的な仕組みがないことも多いのですね。その中でいわゆるCXOに期待するポイントや、特に初動で実現してもらいたいポイントなどがございましたらお聞かせください。

    中山様:社長とCXOで少し違うので、社長の場合の話をします。
    先述の通り、人心掌握がやはりすべてだと思います。ただ、上から目線では絶対いってはいけない。従業員の皆さんもすごく不安に思っているという気持ちにあり、ファンドというよく分からない存在と思っている中、相手と本当に同じ目線に寄り添えるかがすごく大事だと思っております。また、寄り添うだけではなく、分かりやすく、しっかりと方針を示すリーダーシップも重要になってきます。

    CXOというと、エリートでピカピカな経歴があって大企業の改善をして…という方が沢山いらっしゃいますが、そのような実績や経験だけではうまくいかない世界が中堅・中小企業にはあります。これまでの事業面での経験やスキルのみならず価値観も含めて、様々なバックグラウンドの人と共に働くには、「やってみせて、言って聞かせて、…」の実践が重要になってくると思います。
    当然、物事を整理するフレームワーク思考や、いわゆる地頭の良さも必要ですが、何よりも、うまく組織を動かすためのソフトスキルが重要ですね。

    藤原様:一方で、ハードスキルと経験は当然高ければ高いほどいいのは間違いないと思います。特にCFOのような、数字を扱う誤魔化せないポジションの場合は正しい分析手法を理解できていることに加え、監査法人や銀行といった外部の専門家の対応をきちんとできるようなスキルセットは大事です。

    しかしながら、私どもはCXOの方に会社に入っていただいて、その人単独で仕事をしてほしいと思っている訳ではありません。必要なサポートはJ-GIA、J-GIAコンサルティング、JT、博報堂からも提供しますので、特にハードスキルや経験が足りない分野があっても、それは皆で一緒に考えていけばいいと思っています。その点、チームプレイヤーとして取り組める方であることをより重視しています。

    いくつか理由はありますが、中堅中小企業の仕事は1部署では完結しません。仮に営業系の方であったとして、会社の規模が大きくないので、売上を増やすのにもその他部署との連携が欠かせません。特にCXO・役員クラスの方は会社全体を見なくてはいけませんし、いろんな部署を巻き込めるチームプレイヤーとしての素質は必須です。

    また、J-GIAのリソースは幅広くあります。J-GIAのチームメンバーも然り、JT、博報堂まで含めれば、かなりのリソースになります。それらをうまく活用しようとする考え方も重要ですね。
    自ら積極的に「博報堂さんのあの組織のこういうチームと一緒にやったら面白いことができるのでは?」とうまく組み合わせて何かを生み出せるような方かどうかで、会社の伸びしろが大きく変わると思います。そういった意味で、一つのやり方に固執せず「あれも入れたらどう?これも入れたらどうだろう?」とチャレンジできる、そのような方が良いという気がします。

    島津:JTさん、博報堂さんとの連携が御社ならではのハンズオンを生み出せるという点は非常に興味深いです。その辺りで、今までのファンドでのご経験と違うなと実感されるようなことはございますか?

    藤原様:私どもの取り組みスタンスとは、ハンズオンかハンズオフでいうと、ハンズオン系のファンドです。その中でも、JTと博報堂がアライアンス・パートナーとしていることが特殊です。イメージ、二段式ロケットのようになっています。

    まずはJTと一緒に、会社が自走できる体制を構築する。それまでオーナー、創業オーナーが自分の頭で考えて指示を出していたところを、きちんと現場に落とす、会議体をつくって会社が組織として考えて最適な方法をとれるような運営体制、自走体制を整備する。これは事業を承継するという意味においても、会社が今後50年100年ずっと永続して発展できるような体制をつくる。まずこれがロケットの一段目。

    これがうまくいきはじめたところで、二段目の博報堂が機能します。受け皿がしっかりできたところで、ここから売り上げを伸ばしましょう、という時に博報堂のマーケティングチームが入ってくる。これは私どもから見ても非常に心強いですし、会社から見ても強力な助っ人が来たと映ると思います。
    博報堂から来ているメンバーも、博報堂の中でかなり優秀な人たちが関与しています。名だたる大企業のマーケティングを担っているメンバーが入ってきて、売り上げ100億未満の中堅中小企業のマーケティングを考える、通常では実現できないミラクルな組み合わせです。

    超一線級のクリエイターが入ってきて、彼らも親身になって企業のことを考えてくれる。そんな座組があるので、JT、博報堂を含めた関わり方のインパクトが大きいと思います。

    中山様:中堅・中小企業には大抵マーケティング部のようなものはないのですが、博報堂が入ると同時にマーケティング担当の方を採用して、協働してもらいながら2、3年かけて自走体制をつくることもあります。イグジットしたあとも管理面、営業面含めて自分たちでできるように根付かせていくというのが、我々の強いこだわりですかね。

    投資先企業に根付いた固定観念を解く作業はハードだが改革の鍵

    島津:専任の自社のバリューアップ担当の方の存在は強みですね。
    やはりいいお話だけではないと思います。お二人のご経験で、これは大変だったという話がございましたら、お聞かせいただけるとありがたいです。

    中山様:私は、前職から10年くらいファンドにいますが、弊社に入って大変だと思ったのは、やはり企業規模が小さなオーナー企業に入った時です。従業員の方も何十年とずっとオーナー企業にいた方々です。それこそ人事評価や昇給の仕組みもなく、長年オーナーのやり方で運営されてきています。その方個人の問題ではないですが、そのような環境に長年いるとどうしても受け身の姿勢になりがちです。
    そこに我々ファンドが入っていろんな改善をしていこうと思っても、思った通りの反応が得られなかったり、スピード感をもって物事が進められなかったり、そういう現実が広がっていました。
    そうなると、具体的に営業利益改善とか、売上を伸ばすとか以前に、「みんなで一緒にやっていく」「1人1人の意見で会社を変えていこう」と従業員一人一人が主役になれるということを伝え、組織として活性化させるようなことはすごく大事になります。
    具体的に言うと、何をしたら評価されるのかを明確にするために人事評価制度を導入したり、会社としての10年後の姿を提示したり、当人たち自体が気付いていない会社の強みや社会的意義などを外部の視点からお伝えしたり、要は頑張った先に何があるかを提示し、自信を・やる気を引き出すことに注力しました。このような活動を通し、当初は会議での発言も少なかった方々も自発的に発言・行動するようになりました。適切な環境・場をつくれば、能力を開放・発揮できることに繋がるというのを感じますし、会社の雰囲気も大きく変わりました。
    組織の雰囲気が変わり、従業員一人一人が活性化することで、JT、博報堂、J-GIAの数人の力だけでなく、多くの従業員に様々なプロジェクトに関わってもらうことにより、従業員の数だけ何倍もの力で改革を推進していくことができると感じています

    島津:貴重なお話ありがとうございます。藤原様はいかがですか?

    藤原様:事業承継の案件の場合、先代の時代から長い間続けて出来上がった固定観念がありますよね。
    例えば60-70代のシニア世代と、次の30〜40代の人たちの塊がある中で、彼らは皆さん会社のことを考えていますが、データ活用やオペレーションを変えることについて意見が合わなかったりすることがあります。そこに私どもが入っていって、上の世代の良い部分は残しつつ、下の次世代の層と一緒により強いチームをつくっていくというケースがあったりします。

    それから、色々な“見える化”を進めます。
    例えばある消費財の会社の場合、店舗販売の利益率が低いという固定観念がありました。店舗は儲かっていないからもう出店するのは止めるとか、店舗を閉めようという話がありました。しかし実は管理会計上の問題による誤解だったのです。
    そこに我々が入って、見える化をして「店舗は儲かっています」という話をしました。
    そうすると、次は店舗を増やしていきましょうという話に変わりました。
    これまでの経験と勘にもいい部分はあり、全部を否定する必要はありませんが、その考え方をうまくデータも使いながら融合させて承継していく。そういったことで世代を乗り越えていけたらと思いますね。

    それから、私どもファンドは頭ごなしに物事を進めるのではないかと思われがちですが、ファンドは黒子役で、現場で業務を実行していただくのは会社の方々、CXOの方々ですので、皆さんの意見はふんだんに取り入れます。現場の声を吸い上げて、実際にそれでいいと思われることはどんどん進めていきます。

    秘めたる熱い想いで、前向きに成長を牽引してくれる方を求めている

    島津:ありがとうございます。最後に、今後御社と一緒にビジネスをするCXO候補になりうる方々へのメッセージ、こういう方をお待ちしていますというものがあれば、お願いします。

    中山様:これまでの話と重複しますが、端的に言うと、やはり気持ちとしてすごく熱いもの、会社・社会を変えていこうという思いを持っている方。
    「これまでガツガツやってきてうまくいった、周りもそうだった」というのは表に出し過ぎると、特に中堅中小企業の方相手では温度差も生じます。少し表現が難しいですが、熱い想いは持ちながら内に秘めたうえで、しっかりと改革・改善にうまく取り組んでいくスタンスの方が非常にフィットすると思います。

    藤原様:投資ファンドもそうですが、プロ経営者の方々で、「コストカットは自信を持ってできます」という方が多いですよね。私どもはもう少し前向き思考で、成長にフォーカスを当てた投資をしています。自らも会社も成長させることにチャレンジしてみたい、みんなで成長をけん引したい、そんな思考の方に参画いただけるとありがたいと思います。

    日本成長投資アライアンス株式会社(J-GIA) プロフィール

    日本成長投資アライアンス株式会社(所在地:東京都港区、代表取締役社長:立野公一)は、2016年6月に創業し、日本の潜在成長力のある中堅・中小企業に特化したグロース・キャピタル(成長投資)及びスモールキャップ・バイアウト(事業承継投資など)を目的としたファンドを運用する投資会社です。当社の最大の特徴は、日本たばこ産業株式会社と株式会社博報堂をアライアンス・パートナー企業とし、パートナーが有する経営力(人材、ネットワークなど)を、本ファンドが投資する中堅・中小企業に事業支援として提供することで、投資先の企業価値向上を行っていくことです。

    立野公一様 プロフィール

    1974年生まれ。大手外資系金融グループを経て、1999年にマッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパン入社。約5年間の在籍中に多数の成長支援・企業再生案件を手がけた後、ゴールドマン・サックス証券で成長投資・再生投資に携わった。そして2007年、ユニゾン・キャピタルへ転じ、投資先のあきんどスシロー、旭テックにて経営変革を担った後、2013年にはパートナーに就任。2016年6月、日本成長投資アライアンスを設立し、代表取締役社長に就任した。

    中山淳 様

    独立系M&Aアドバイザリーファーム及びKPMG FASでのM&Aアドバイザリー業務を経て、三菱系のPEファンドである丸の内キャピタルに転職。約9年間の在籍期間中に、タカラトミー、山本製作所、成城石井等への投資に携わった。2017年にJ-GIAに参画し、プロフレックス等の投資案件を担当。

    藤原摂 様

    新卒でドイツ証券に入社。約5年に渡りPEファンドを顧客としたM&Aや資金調達等に携わった後、米国系PEファンドのTPGキャピタルへ転職。約7年間の在籍期間中にタカラトミー、ジョイント・コーポレーション、ナクアホテル&リゾーツ、不動産、債券等の投資に携わった。その後、設立メンバーとしてJ-GIAに参画。

    投資チーム 募集要項
    募集職種 PEファンド、投資銀行、コンサルティングファーム、会計事務所、法律事務所 等のプロフェッショナルファーム、或いは 商社・事業会社での投資業務等の経験を有する方
    業務内容 投資検討や投資先企業のバリューアップ等のプライベート・エクイティ業務全般
    勤務地 J-GIA東京オフィス
    給与 前職考慮の上 決定
    バリューアップチーム募集要項
    募集対象 【プロフェッショナルファーム(コンサルティングファーム、PEファンド、会計事務所等)ご出身の方】
    戦略策定に留まらず、ハンズオン支援までの経験が豊富な方
    経営基盤整備(管理会計導入・KPI設定等)に加えて、事業面における業務改善・経営支援等で実績がある方
    PEファンドの投資先支援の経験があれば尚可

    【事業会社ご出身の方】
    CxOクラス等で会社全体のマネジメント経験を有する方
    PMI等のプロジェクト経験を有する方

    業務内容 投資先企業のバリューアップ支援、投資検討の業務支援
    勤務地 J-GIA東京オフィス
    給与 前職考慮の上 決定